私はミヨさんの協力のもと、古井戸の過去について調べ始めた。古文書を読み解き、村の古老たちに話を聞き、ようやく古井戸にまつわる悲しい過去を知ることができた。
その昔、この村に住む美しい娘、サユリは、許嫁の男に裏切られ、絶望のあまり古井戸に身を投げたのだという。サユリは、死んでもなお、許嫁への恨みを抱き続けており、その強い怨念が、祟りとなって現れているのだ。
サユリの魂を鎮めるためには、サユリの無念を晴らさなければならない。私はミヨさんと相談し、サユリの霊を慰めるための儀式を行うことにした。
満月の夜、私たちは古井戸の前に祭壇を設け、サユリの霊を呼び出した。私は、サユリに向かって、彼女の悲しみを理解し、彼女の無念を晴らすことを約束した。
儀式が終わると、井戸の中からすすり泣く声が聞こえなくなった。代わりに、静寂が辺りを包み込んだ。私は、サユリの魂がようやく解放されたのだと感じた。
しかし、数日後、私は再び悪夢を見るようになった。今度は、サユリではなく、見知らぬ男が井戸の底から這い上がってくる夢だった。男の顔は、サユリを裏切った許嫁にそっくりだった。男は私に向かって、何かを訴えかけるように手を伸ばしてくる。しかし、男の声は聞こえない。ただ、深い憎悪と、狂気に満ちた笑みが、その表情から痛いほど伝わってくるだけだ。
私は、サユリの祟りは終わったとしても、古井戸に眠る闇は、まだ消えていないのだと感じた。そして、その闇は、いつか再び、この村を覆い尽くすだろう。
私は、古井戸から目を離すことができなくなった。
