最近、近所のコンビニに設置された監視カメラが、どうもおかしい。
最初は気のせいかと思った。レジ待ちをしている時、ふとカメラがこっちを向いているような気がしたのだ。別に怪しいことはしていない。ただ、週刊誌の立ち読みをしているだけだ。しかし、その視線は妙に重く、居心地が悪かった。
そのコンビニは、僕のアパートから一番近い。夜食の調達や、切手を買う時によく利用する。だから、そのカメラの存在は、徐々に気になり始めた。レジに並ぶたびに、さりげなくカメラを見るようになった。
ある日、ついに決定的な瞬間を目撃した。僕が棚の商品を眺めていると、カメラがゆっくりと、まるで生き物のように、こちらを向いて、そして…笑ったのだ。
もちろん、カメラが文字通り笑うわけではない。レンズの角度と照明の関係で、そう見えただけかもしれない。しかし、僕には確かに笑っているように見えた。ニヤリと、人を小馬鹿にするような、悪意のある笑いだった。
それ以来、僕はそのコンビニに行くのを避けるようになった。少し遠回りになるが、別のコンビニを利用するようにした。しかし、心のどこかで、あの笑うカメラが気になっていた。
ある夜、どうしても深夜にカップラーメンが食べたくなった。仕方なく、あのコンビニに行くことにした。覚悟を決めて、店のドアを開けた。
店内は静まり返っていた。店員はレジの中で退屈そうに雑誌を読んでいる。僕はできるだけカメラを見ないように、カップラーメンの棚に向かった。
しかし、やはり気になって、ちらりとカメラを見てしまった。すると、案の定、カメラは僕の方を向いて、ニヤニヤと笑っていた。その笑いは、以前よりも明らかに悪質で、嘲笑を含んでいた。
僕は恐怖を感じ、急いでカップラーメンを手に取り、レジに向かった。店員は無愛想にバーコードを読み取り、会計を済ませた。僕は一目散に店を出て、アパートに逃げ帰った。
部屋に戻り、カップラーメンにお湯を注ぎ、窓から外を見た。すると、コンビニの前に人だかりができているのが見えた。何事かと思い、よく見てみると、それは警察官だった。
しばらくすると、パトカーが何台も到着し、コンビニは騒然となった。僕は、何が起こったのか全くわからなかった。
翌日、ニュースでそのコンビニの事件が報道された。なんと、店員が強盗に襲われ、殺害されたというのだ。犯人はまだ捕まっていないらしい。
僕は戦慄した。あの笑うカメラは、強盗の犯行を予知していたのだろうか? それとも、犯人と繋がっていたのだろうか?
その日から、僕はコンビニの前を通るのも怖くなった。しかし、どうしても気になることがあった。あの笑うカメラは、一体何を見て笑っていたのだろうか?
ある日、思い切って警察に事件の証言をすることにした。あの監視カメラが笑っていたことを話すと、警察官は怪訝そうな顔をしたが、一応話を聞いてくれた。
数日後、警察から連絡があった。コンビニの監視カメラの映像を解析した結果、驚くべき事実が判明したというのだ。
なんと、僕がカップラーメンを買う数分前、店の外で、僕にそっくりな男がうろついていたというのだ。その男は、不気味な笑みを浮かべながら、コンビニの中を覗き込んでいたという。
つまり、あの笑うカメラは、僕にそっくりな男を見て笑っていたのだ。そして、その男こそが、強盗犯だったのだ。
僕は背筋が凍る思いがした。もし、僕がもう少しコンビニに行くのが遅れていたら、僕は犯人と間違われて逮捕されていたかもしれない。あるいは…もっと恐ろしいことが起こっていたかもしれない。
今でも、あのコンビニの監視カメラは、僕にニヤニヤと笑いかけているような気がする。そして、僕は、その笑みの意味を、決して忘れることはないだろう。