第一ブロック:夢日記の異変
最近、夢日記をつけ始めたんだ。きっかけは、近所の古道具屋で見つけた、年代物の革装丁ノート。表紙にはかすれた金文字で「AUTOMATIC DREAM TRANSLATOR」と書いてあった。
「自動夢翻訳機…?」
なんだか面白そうだったので、衝動買いしてしまった。その日から毎晩、見た夢をノートに書き込むのが日課になった。
最初のうちは、ありふれた夢ばかりだった。学校のテストに遅刻するとか、好きな人に告白できないとか、巨大なケーキに追いかけられるとか…。それを適当な言葉で記録していた。
しかし、数日後、異変が起きた。夢日記の内容が、急に意味不明になったのだ。
「深海魚の歯車が軋む音。螺旋階段の踊り場で迷子の子猫が泣いている。紫色の雨が降り、コンクリートジャングルに曼珠沙華が咲き乱れる…」
最初は、疲れているせいだと思った。でも、その奇妙な夢は、毎晩のように現れるようになった。
第二ブロック:翻訳機の正体
夢の内容があまりにも不可解なので、ノートを詳しく調べてみた。すると、裏表紙の内側に、小さなスイッチがあるのを見つけた。
好奇心に駆られて、スイッチを押してみた。すると、ノート全体が微かに震え、表紙の金文字が光り出した。
「まさか…本当に夢を翻訳する機械なのか?」
その晩、見た夢をノートに書き込んでみた。すると、いつもと変わらない、意味不明な言葉が並んでいる。
しかし、ノートを閉じて数秒後、信じられないことが起こった。ノートから、低い機械音が聞こえてきたのだ。
恐る恐るノートを開いてみると、先ほど書いた文章が、まるで違う文章に変わっていた。
「私の名前は、管理者72号。夢のデータベースへのアクセスを許可します。警告:未知の領域への侵入には十分ご注意ください。」
夢翻訳機は、本当に夢を翻訳していたのだ。しかも、どうやらそれはただの翻訳機ではなく、夢の世界にアクセスするための装置らしい。
第三ブロック:夢の中の異世界
次の日から、私は積極的に夢翻訳機を使うようになった。毎晩、見た夢を翻訳し、その内容を詳しく調べた。
翻訳された夢は、どれも奇妙で恐ろしいものばかりだった。巨大な目玉が空を飛び、言葉を話す植物が生い茂り、顔のない人々が街を彷徨っている。
最初は怖かったが、次第にその異世界に惹かれていった。その世界は、現実世界にはない自由と狂気に満ち溢れていた。
しかし、夢の世界を探求していくうちに、あることに気がついた。夢の内容が、日に日に現実世界に侵食してきているのだ。
例えば、夢の中で見た紫色の雨が、現実世界でもほんの少しだけ降ったり、夢の中で聞いた奇妙な音楽が、街中で聞こえてきたり…。
最初は気のせいだと思っていたが、その頻度は日に日に増していった。
第四ブロック:現実への侵食
ある日、私は夢の中で、現実世界とそっくりな場所を見つけた。しかし、その場所はどこか歪んでいて、色彩もおかしい。
そこには、顔のない人々が歩き回り、言葉を話す植物が生い茂っていた。まるで、夢の世界が現実世界をコピーしたかのような光景だった。
私は恐怖を感じ、急いで夢から覚めようとした。しかし、どうしても目が覚めない。まるで、夢の世界に閉じ込められてしまったかのようだった。
必死にもがいているうちに、ようやく目が覚めた。しかし、私の部屋は、夢の中で見た光景とそっくりになっていた。
壁には言葉を話す植物が生え、窓の外には顔のない人々が歩いている。私の現実世界は、夢の世界に侵食されてしまったのだ。
第五ブロック:夢の終わり
私は夢翻訳機を壊そうとした。しかし、それはまるで生きているかのように、私の手から逃げ出した。
そして、夢翻訳機は私に囁いた。「もう遅い。夢は現実になり、現実は夢になる。あなたは、夢の一部となるのだ…」
私は抵抗したが、無駄だった。私の体は徐々に透明になり、夢の世界に溶け込んでいった。
今、私は夢の中にいる。顔のない人々の一人として、言葉を話す植物に囲まれて、永遠に彷徨っている。
もし、あなたが「AUTOMATIC DREAM TRANSLATOR」と書かれたノートを見つけたら、絶対に手を出さないでください。それは、あなたの現実を夢に変える、悪夢の入り口なのです。
ああ、そうだ。もしかしたら、この文章もまた、誰かの夢の一部なのかもしれない。