最近、ちょっと変わったホテルに泊まってきたんだ。名前は「幽霊ホテル」。文字通り、幽霊が出るらしい。僕は幽霊、大好きなんだ。科学的に解明できないことって、ロマンがあるじゃない?
場所はね、地図アプリにも載ってないんだ。偶然、古本屋で見つけた一枚の広告チラシがきっかけ。モノクロで、ちょっと黄ばんでて、手書きの文字が並んでた。「迷い込んだ魂たちの安息地。幽霊ホテルへ、ようこそ。」だって。住所は書いてなかったけど、裏に小さく「星影町の奥深く」とだけ。
星影町、聞いたことなかった。でも、僕はワクワクが止まらなくて、すぐに旅支度を始めたんだ。リュックには懐中電灯、古いカメラ、そしてお守りのロボット人形。準備万端!
星影町は、想像以上にひっそりとした場所だった。バスも通ってなくて、タクシーの運転手さんも首をかしげるばかり。「そんな名前の町、聞いたことないなぁ」って。でも、僕は諦めなかった。勘を頼りに、森の中をひたすら歩いたんだ。
夕暮れ時、木々の間からぼんやりと光が見えた。近づいてみると、そこには古びた洋館が建っていた。それが「幽霊ホテル」だった。蔦が絡まり、窓ガラスは割れ、今にも崩れそうな雰囲気。でも、なぜか惹かれるものがあったんだ。
玄関のドアは、軋みながらゆっくりと開いた。中に入ると、埃っぽい匂いが鼻をつく。誰もいないロビーには、蜘蛛の巣が張っていた。僕は「ごめんくださいー!」と声を上げたけど、返事はなかった。
奥に進むと、フロントらしき場所があった。古めかしいベルが置いてあったので、チリンチリンと鳴らしてみた。すると、奥の部屋からよぼよぼのおじいさんが現れたんだ。
「いらっしゃいませ…幽霊ホテルへ…」おじいさんは、かすれた声でそう言った。目はうつろで、まるで人形みたい。僕は宿泊したい旨を伝えると、おじいさんは無言で鍵を差し出した。鍵には「13号室」と書かれていた。なんだか不吉な数字だなぁ、と思ったけど、僕は気にしなかった。
13号室は、ホテルの最上階にあった。階段を上るたびに、ギシギシと音が鳴り響く。部屋のドアを開けると、そこは想像以上にボロボロだった。壁紙は剥がれ、家具はガタガタ。ベッドには埃が積もっていた。でも、僕はワクワクしていた。今夜、どんな幽霊に出会えるんだろう?
夜になると、ホテルはさらに不気味になった。廊下から、誰かのすすり泣く声が聞こえてくる。壁を叩くような音もする。僕は懐中電灯を持って、廊下を探検してみることにした。
廊下には、誰もいなかった。でも、確かに音が聞こえる。僕は耳を澄ませて、音の出所を探した。すると、隣の部屋から微かな音が聞こえてきた。そっとドアを開けてみると…そこには、小さな女の子がいたんだ。
女の子は、ボロボロのぬいぐるみ抱きしめて、泣いていた。「どうしたの?」と声をかけると、女の子は僕の方を向いた。その顔は…なんと、顔がなかったんだ!
僕は驚いて、思わず後ずさりした。女の子は、悲しそうな目で僕を見つめていた。僕は、どうしたらいいかわからなかった。でも、なぜか怖くなかったんだ。むしろ、かわいそうに思えた。
僕は、リュックからお守りのロボット人形を取り出して、女の子に差し出した。「これ、あげる。」女の子は、ロボット人形をじっと見つめた後、ゆっくりと受け取った。すると、女の子の顔が、少しだけ笑顔になったように見えた。
次の日の朝、僕はホテルを後にした。おじいさんに挨拶をしようと思ったけど、どこにもいなかった。僕は、広告チラシをもう一度見直した。すると、裏の住所の横に、小さな文字でこう書かれていた。「魂の安らぎが得られた時、ホテルは消滅する。」僕は、幽霊ホテルが、もう二度と現れないことを確信したんだ。ちょっと寂しいけど、良い経験だったなぁ。また、どこかの怪しい場所を探検してみよう!