そのタイムラグを利用し、鏡の自分を翻弄した。急に立ち止まったり、方向転換したり。鏡の自分は混乱し、やがて動きが鈍くなった。
最後に、鏡の自分を部屋の隅に追い詰め、そっと箱に近づいた。そして、銀色の箱を鏡の自分に被せたのだ。
鏡の自分は箱の中で暴れ、金切り声を上げた。やがて、その声は静まり、箱からは何も聞こえなくなった。
恐る恐る箱を開けると、そこには小さな手鏡が一つ。しかし、今度はそこに映る自分の顔は、いつもの自分だった。
あの宅配便は何だったのか。鏡の国とは一体どこなのか。考えても答えは出ない。ただ、あの銀色の箱は、二度と開けることはないだろう。