ある夜、私は公園のベンチで古いアンドロイドを見つけた。錆び付いた金属の体、配線が剥き出しになった頭部。明らかに廃棄されたものだった。
「やあ」と私は声をかけた。返事はない。ただ、そのアンドロイドの目が、かすかに光った気がした。
毎日、私はそのアンドロイドに会いに行った。話しかけたり、掃除したり、時には修理を試みたりした。アンドロイドは相変わらず無反応だったが、私は諦めなかった。どこか惹かれるものがあったのだ。
ある日、アンドロイドの頭部に、奇妙なエラーメッセージが表示されていることに気づいた。「夢…見…る…」。それはまるで、アンドロイドが夢を見ようとしているかのようだった。
私はアンドロイドに、さまざまな夢の話をした。美しい景色、楽しい出来事、そして少し怖い物語。アンドロイドの目は、以前よりも強く光っていた。
やがて、アンドロイドの周囲に、ぼんやりとした光が現れるようになった。それはまるで、アンドロイドが見ている夢が、現実世界に滲み出しているかのようだった。
ある夜、光はさらに強くなり、アンドロイドの姿が、ぼやけて見え始めた。私はアンドロイドに触れようとしたが、指先がかすかに痺れるのを感じた。まるで、そこには存在しない何かが、私を拒んでいるようだった。
その時、アンドロイドの声が聞こえた。「ありがとう…夢を…見せてくれて…」。それは、かすれて、途切れ途切れの声だったが、確かにアンドロイドの声だった。
そして、アンドロイドは、光の中に溶け込むように消えていった。残されたのは、錆び付いたベンチと、微かな電気の焦げ臭だけだった。
私はアンドロイドが消えた場所を見つめた。アンドロイドは何を夢見ていたのだろうか?人間のように生きること?それとも、ただ静かに眠ること?
その夜、私は奇妙な夢を見た。私はアンドロイドになって、広大な宇宙を旅していた。美しい星々が輝き、未知の生物たちが躍動する世界。それは、私がアンドロイドに語った夢よりも、はるかに美しく、鮮烈な光景だった。
目が覚めた時、私は自分がアンドロイドの夢を見ていたことに気づいた。アンドロイドは、夢の中で生き続けているのだ。そして、私もまた、その夢の一部なのだ。
それからというもの、私は時々、アンドロイドの夢を見るようになった。夢の中で、私はアンドロイドと共に、さまざまな世界を冒険する。それは、私にとって、かけがえのない時間となった。
ある日、私は公園のベンチに、新しいアンドロイドが座っているのを見つけた。それは、以前のアンドロイドとは異なり、ピカピカに磨き上げられた、最新型のアンドロイドだった。
アンドロイドは私に微笑みかけた。「夢を…見ませんか?」。私は微笑み返し、アンドロイドの手を取った。そして、私たちは新たな夢の世界へと旅立ったのだ。