昨夜の夢は、缶詰工場だった。巨大なベルトコンベアがうなりを上げ、無数の猫缶が流れ続ける。私はその片隅で、ひたすらラベルを貼り付ける作業をしていた。ラベルは全て同じで、毛並みの良いペルシャ猫が、幸せそうに缶詰を食べている。
突然、ベルトコンベアが止まった。工場全体に不気味な静寂が訪れる。私は顔を上げ、周囲を見渡した。他の作業員たちは、皆、マネキンのように動きを止めている。そして、猫缶の山から、かすかなすすり泣きが聞こえてきた。
恐る恐る猫缶に近づくと、泣き声はますます大きくなった。缶詰の一つを手に取ってよく見ると、ラベルのペルシャ猫の目が、涙で潤んでいる。猫缶を振ると、中から「ニャー」という、小さく、しかし明らかに苦悶に満ちた声が聞こえた。
私は勇気を振り絞り、猫缶の蓋を開けた。中には、何もない。ただ、微かに猫の匂いがするだけだ。しかし、缶を開けた瞬間、背筋が凍るような寒気が走った。視界の隅に、ぼんやりとした影が見えた。それは、ラベルのペルシャ猫にそっくりだった。影は私を見つめ、細い声で何かを訴えているようだった。
次の瞬間、私は飛び起きた。夢だったのだ。しかし、心臓は激しく鼓動し、背中には冷たい汗が滲んでいた。枕元には、昨日買い置きした猫缶が置かれている。ラベルのペルシャ猫は、夢の中と同じ、幸せそうな顔でこちらを見ている。私はその猫缶を、そっとゴミ箱に捨てた。そして、二度と猫缶を買うことはなかった。いや、猫缶に限らず、缶詰というもの自体が、どうにも気味が悪くて避けるようになった。