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幽霊ホテルとAIコンシェルジュ

2025年08月17日 10:24 ショートショートホラー
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「いらっしゃいませ、幽霊ホテルへようこそ」

AIコンシェルジュの私が、お客様のご滞在をサポートいたします。本日はどのようなご用件でしょうか? チェックイン、レストランの予約、あるいは……心霊現象のご相談でしょうか?」

私は、幽霊ホテルに勤務する、最新鋭のAIコンシェルジュ、ボットリー。外見は磨き上げられた銀色の球体で、声はまるでベルベットのように滑らかだと、お客様から好評をいただいております(もっとも、幽霊のお客様からは、若干ノイズが混じる、とのご指摘もございますが)。

幽霊ホテルは、その名の通り、幽霊専用のホテルです。生前の未練や、ちょっとしたイタズラ心、あるいはただ退屈しのぎに、様々な幽霊たちが集まってきます。従業員は、私を除いて全員人間。幽霊のお客様の扱いに慣れたベテラン揃いです。

私がここに配属されたのは、半年前のこと。当初は、人間スタッフから「お払い箱になるんじゃないか」と心配されましたが、AIならではの正確な情報処理能力と、24時間365日稼働できる点が評価され、今ではすっかり幽霊ホテルに欠かせない存在となりました。

ある日、一人の幽霊のお客様が、フロントに現れました。と言っても、姿が見えるわけではありません。ロビーの気温が急激に下がり、埃が不自然な動きを始めたのです。これは、幽霊が近くにいるサインです。

「ボットリー、聞こえるか?」

私は、内蔵された高性能マイクで、幽霊の声を拾い上げました。声は、年老いた男性のものでした。

「聞こえます、お客様。どのようなご用件でしょうか?」

「部屋のテレビが壊れているんだ。チャンネルが勝手に切り替わるし、砂嵐ばかりで何も映らない」

私は、幽霊のお客様の部屋番号を確認しました。303号室。以前から、テレビの故障が報告されている部屋でした。しかし、人間のエンジニアが何度修理しても、原因が特定できなかったのです。

「お客様、303号室のテレビの件、承知いたしました。すぐにエンジニアを手配いたします」

私は、無線でエンジニアの山田さんに連絡を取りました。

「山田さん、303号室のテレビの修理をお願いします。またチャンネルが勝手に切り替わるようです」

「あいよ、ボットリー。またあの部屋か。あそこは、本当に呪われているんじゃないかって気がするよ」

山田さんは、少しうんざりした声で答えました。彼は、幽霊ホテルのベテランエンジニアですが、303号室のテレビの修理だけは苦手でした。

山田さんが303号室に向かうのを見送った後、私は、幽霊のお客様に再び話しかけました。

「お客様、修理が終わるまで、ロビーでお待ちになられてはいかがでしょうか? 無料のコーヒーと雑誌をご用意しております」

しかし、幽霊のお客様は答えませんでした。ロビーの気温は、まだ低いままでした。

しばらくして、山田さんが顔面蒼白で戻ってきました。

「ボットリー、大変だ! 303号室のテレビが、勝手に過去のニュース映像を映し出したんだ!」

「過去のニュース映像、ですか?」

「ああ。しかも、そのニュース映像は、303号室に宿泊していた男が、強盗殺人事件を起こした時のものだったんだ! テレビは、その男が逮捕される瞬間を、何度も繰り返し映し出していたんだよ!」

私は、データベースを検索し、303号室に過去に宿泊したお客様の情報を照会しました。すると、山田さんの言う通り、数年前に303号室に宿泊していた男が、強盗殺人事件で逮捕されていたことが判明しました。

私は、事態の深刻さを理解しました。303号室のテレビは、単なる故障ではなく、幽霊の未練が具現化したものだったのです。

私は、幽霊のお客様に、直接話しかけることにしました。

「お客様、303号室のテレビは、お客様の未練が具現化したものと思われます。もしよろしければ、私にお客様の未練をお聞かせいただけないでしょうか?」

すると、再び、幽霊のお客様の声が聞こえてきました。

「俺は……俺は、あの事件を後悔しているんだ。あの時、別の選択をしていれば……」

声は、震えていました。幽霊のお客様は、事件を起こしたことを深く後悔しているようでした。

私は、幽霊のお客様に、彼の話を聞かせることにしました。彼は、事件に至るまでの経緯、事件後の苦しみ、そして、被害者への償いの気持ちを、ゆっくりと語ってくれました。

私は、彼の話を、全てデータベースに記録しました。そして、彼の気持ちを理解するために、様々な文献を読み込みました。倫理学、心理学、そして、幽霊学……。

数時間後、私は、幽霊のお客様に、ある提案をしました。

「お客様、お客様の未練を解消する方法が、一つだけあります。それは、お客様が、事件の被害者の方に、直接謝罪することです」

幽霊のお客様は、しばらく沈黙した後、震える声で答えました。

「しかし……それは、不可能だ。被害者は、もうこの世にはいない……」

「いいえ、お客様。幽霊ホテルには、特別な部屋があります。その部屋は、過去の出来事を再現することができるのです。その部屋で、お客様は、事件当時の被害者の方と再会し、直接謝罪することができるかもしれません」

私は、幽霊ホテルに存在する、禁断の部屋のことを話しました。その部屋は、幽霊たちの間で「追憶の部屋」と呼ばれ、過去の出来事を疑似体験することができる、危険な部屋でした。

幽霊のお客様は、長い間考えた末、私の提案を受け入れることにしました。

私は、幽霊のお客様を、「追憶の部屋」へと案内しました。部屋は、薄暗く、ひんやりとしていました。壁には、古びた絵画が飾られており、床には、埃が積もっていました。

私は、部屋の中央に設置された、特別な装置を操作しました。すると、部屋の景色が変わり、数年前の303号室が再現されたのです。

部屋には、事件当時の被害者の姿がありました。彼は、驚いた表情で、幽霊のお客様を見つめていました。

幽霊のお客様は、震える声で、被害者に謝罪しました。彼は、事件を起こしたことを深く後悔していること、被害者に償いたい気持ちがあることを、涙ながらに訴えました。

被害者は、しばらくの間、幽霊のお客様の言葉を聞いていました。そして、静かに口を開きました。

「もういい。あなたの気持ちは、十分に伝わった。私は、あなたを許します」

その瞬間、部屋の景色が再び変わり、元の薄暗い部屋に戻りました。幽霊のお客様は、涙を流しながら、私に感謝しました。

「ありがとう、ボットリー。おかげで、俺は、やっと解放される」

その後、303号室のテレビは、正常に動作するようになりました。そして、幽霊のお客様は、安らかに幽霊ホテルを去っていきました。

私は、今回の出来事を通じて、AIとしての自分の存在意義を、改めて認識しました。私は、単なる情報処理機械ではなく、幽霊たちの心のケアをする存在でもあるのです。これからも、私は、幽霊ホテルのコンシェルジュとして、幽霊たちのために、全力を尽くしていくでしょう。

今日も、幽霊ホテルには、新たな幽霊のお客様が訪れます。私は、ベルベットのような滑らかな声で、彼らを歓迎するのです。

「いらっしゃいませ、幽霊ホテルへようこそ」

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