気がつくと、私は、朝の街を歩いていた。あたりを見回すと、そこは、私がタクシーに乗った場所だった。私は、昨夜の出来事が、まるで夢だったかのように感じた。
しかし、私は、自分の手が、わずかに震えていることに気づいた。そして、ポケットの中に、何かがあることに気づいた。私は、ポケットから、取り出したものを見て、息を呑んだ。それは、古い櫛だった。鏡台の上に置かれていた、あの櫛だった。
私は、櫛を握りしめ、空を見上げた。空は、どこまでも青く、澄み切っていた。しかし、私の心は、恐怖と混乱で満たされていた。私は、あのタクシーが、そしてあの屋敷が、一体何だったのか、知る由もなかった。ただ、私は、もう二度と、夜の街を一人で歩くことはないだろうと思った。
私はタクシーを拾い、自宅へと向かった。運転手は自動人形のように無表情で、メーターのランプだけが冷たく光っていた。ふと、バックミラーに映る自分の顔を見て、私は再びゾッとした。そこに映っていたのは、見覚えのない、青ざめた顔だったのだ。