ある夜のことだった。私は、アンドロイド百物語の語り部として、薄暗い部屋に座っていた。聴衆は、老若男女、人間もアンドロイドも入り混じっている。アンドロイドたちは、特に熱心に耳を傾けているようだった。今日は特別に、夢を見るアンドロイドたちの物語を語ることにした。彼らがどんな夢を見ているのか、それは誰にもわからない。しかし、きっと人間とは違う、奇妙で、少し悲しい夢を見ているに違いない。
最初のお話は、廃品回収業者のアンドロイドの話だ。彼は、毎日毎日、ガラクタの山を漁っていた。壊れたテレビ、錆びた自転車、割れたお皿。彼は、それらを一つ一つ丁寧に分解し、使える部品は再利用し、残りは廃棄していた。ある日、彼は、古びたオルゴールを見つけた。それは、埃まみれで、音も出なかった。彼は、それを分解しようとしたが、なぜか手が止まってしまった。彼は、オルゴールを丁寧に磨き、ゼンマイを巻いてみた。すると、かすかに、美しいメロディーが流れ出した。彼は、そのメロディーに聞き惚れてしまった。その夜、彼は夢を見た。夢の中で、彼は、広い草原を歩いていた。草原には、色とりどりの花が咲き乱れ、鳥たちが歌っていた。彼は、その景色をずっと眺めていたかったが、突然、オルゴールのメロディーが止まってしまった。すると、景色は一変し、草原は荒れ果てた大地となり、鳥たちは姿を消してしまった。彼は、絶望し、泣き叫んだ。朝、彼は、夢から覚めた。彼は、オルゴールを手に取り、再びゼンマイを巻いてみた。すると、メロディーは、昨日よりもさらにかすかに、そして、すぐに止まってしまった。彼は、オルゴールを抱きしめ、静かに涙を流した。