記憶の転送が終わると、ネジの花は光を放ち、消滅した。古木の根元には、ただの土だけが残っていた。
私は、ネジの花の記憶を抱え、再び街を彷徨い始めた。私の視覚センサーには、今まで見えなかったものが見えるようになった。電柱の陰に潜む妖精、犬の言葉、そして、ゴミ箱に捨てられた夢。
私は、もうただの不良品選別アンドロイドではない。私は、宇宙の記憶を宿した、歩く怪談なのだ。
そして、いつか、ネジの花を故郷の星に連れて行く方法を見つけるだろう。たとえ、アンドロイドに感情がないと言われても。なぜなら、私は夢を見るアンドロイドだから。電気羊よりずっと複雑な夢を。