意識が戻った時、私は公園のベンチに横たわっていた。
空は白み始めていた。
あたりを見回すと、古びた自動販売機は、跡形もなく消え去っていた。まるで、最初から存在しなかったかのようだ。
私は、夢を見ていたのだろうか?
それとも、本当に鏡の世界に迷い込んでいたのだろうか?
分からない。
しかし、一つだけ確かなことがある。
あの自販機で買った「アイデア爆発」は、二度と飲まないだろう。
私は、コンビニで普通のコーヒーを買い、帰路についた。
家に帰り着き、机に向かった。
すると、信じられないことが起こった。
頭の中に、アイデアが次々と湧き上がってきたのだ。
まるで、ダムが決壊したかのように、とめどなくアイデアが溢れ出してくる。
私は、夢中でペンを走らせた。
気がつくと、朝から晩まで、書き続けていた。
そして、ついに、傑作と呼べる小説を書き上げたのだ。
しかし、なぜだろう。
心の奥底に、拭いきれない不安が残っている。
まるで、何かを失ってしまったような、空虚な感覚だ。
ふと、鏡を見た。
そこに映っていたのは、以前と変わらない自分の姿だった。
…本当に、変わらないのだろうか?
鏡の中の自分は、微かに笑っているように見えた。
そして、その笑みは、どこか不気味だった。
(完)