僕は、仕事で大きなミスをしてしまった。上司にこっぴどく叱られ、落ち込んで帰宅した。
部屋に入ると、壁の染みが、今まで見たことのないほど歪んでいた。老婆の顔は、怒りに満ち溢れ、まるで鬼のような形相だ。
そして、囁き声も、今までとは全く違っていた。
「…ころ…せ…」
僕は、恐怖で身がすくんだ。
「…あいつ…を…ころ…せ…」
僕は、震える声で言った。
「…誰を…?」
すると、染みの老婆は、ニヤリと笑った。
「…おまえ…を…」
その瞬間、壁の染みが、僕に襲い掛かってきた。そして、僕は、暗闇の中に意識を失った。
…次に気がついたとき、僕は、自分の部屋の壁になっていた。苦悶の表情を浮かべた、老婆の顔の染みとして。そして、微かな囁き声が聞こえてくる。
「…たすけ…て…」