最近、近所のデパートで夢遊病患者専用のフロアがオープンした。最初は冗談かと思ったが、街の噂は本当だった。夜な夜な、パジャマ姿の見慣れない人々が、まるで蟻が砂糖に群がるように、そのデパートへと吸い込まれていくのだ。
私は好奇心旺盛な性格なので、どうしてもその夢遊病デパートの中身が気になって仕方なかった。しかし、私は夢遊病ではない。どうしたものか…。そこで、私はある突飛な作戦を思いついた。睡眠導入剤を大量に飲み、無理やり夢遊病患者になりすますのだ!
計画は実行に移された。大量の睡眠導入剤を飲み干し、意識が朦朧とする中、私はパジャマに着替えてデパートへと向かった。案の定、私は夢遊病患者として認識され、警備員に誘導されるまま、夢遊病専用フロアへと足を踏み入れた。
そこは、想像を絶する光景だった。フロア全体が巨大な遊園地のようになっており、メリーゴーラウンドやジェットコースター、お化け屋敷まであった。しかし、乗客は皆、無表情で人形のように動かない。まるで、操り人形の糸が切れてしまったかのように。私は、その異様な光景に恐怖を覚えながらも、奥へと進んでいった。
最奥には、巨大な鏡が置かれていた。近づいてよく見ると、鏡の中には、夢遊病デパートの支配人の姿が映っていた。彼は、ニヤリと笑うと、こう言った。「ようこそ、夢遊病デパートへ。ここでは、あなたの夢が現実になる。ただし、夢から覚めることはない。」私は、恐怖のあまり悲鳴を上げたが、声は誰にも届かなかった。なぜなら、私もまた、夢遊病デパートの一部となってしまったからだ。